坊っちゃん - 【一】 - 《11》
どうか置いて下さいと何遍も繰《く》り返して頼んだ。
おれも何だかうちが持てるような気がして、うん置いてやると返事だけはしておいた。
ところがこの女はなかなか想像の強い女で、あなたはどこがお好き、麹町《こうじまち》ですか麻布《あざぶ》ですか、お庭へぶらんこをおこしらえ遊ばせ、西洋間は一つでたくさんですなどと勝手な計画を独りで並《なら》べていた。
その時は家なんか欲しくも何ともなかった。
西洋館も日本建《にほんだて》も全く不用であったから、そんなものは欲しくないと、いつでも清に答えた。
すると、あなたは欲がすくなくって、心が奇麗だと云ってまた賞めた。
清は何と云っても賞めてくれる。