坊っちゃん - 【一】 - 《4》
大工の兼公《かねこう》と肴屋《さかなや》の角《かく》をつれて、茂作《もさく》の人参畠《にんじんばたけ》をあらした事がある。
人参の芽が出揃《でそろ》わぬ処《ところ》へ藁《わら》が一面に敷《し》いてあったから、その上で三人が半日|相撲《すもう》をとりつづけに取ったら、人参がみんな踏《ふ》みつぶされてしまった。
古川《ふるかわ》の持っている田圃《たんぼ》の井戸《いど》を埋《う》めて尻《しり》を持ち込まれた事もある。
太い孟宗《もうそう》の節を抜いて、深く埋めた中から水が湧《わ》き出て、そこいらの稲《いね》にみずがかかる仕掛《しかけ》であった。
その時分はどんな仕掛か知らぬから、石や棒《ぼう》ちぎれをぎゅうぎゅう井戸の中へ挿《さ》し込んで、水が出なくなったのを見届けて、うちへ帰って飯を食っていたら、古川が真赤《まっか》になって怒鳴《どな》り込んで来た。
たしか罰金《ばっきん》を出して済んだようである。