坊っちゃん - 【五】 - 《62》
話すならもっと大きな声で話すがいい、また内所話をするくらいなら、おれなんか誘わなければいい。
いけ好かない連中だ。
バッタだろうが雪踏《せった》だろうが、非はおれにある事じゃない。
校長がひとまずあずけろと云ったから、狸《たぬき》の顔にめんじてただ今のところは控《ひか》えているんだ。
野だの癖に入らぬ批評をしやがる。
毛筆《けふで》でもしゃぶって引っ込んでるがいい。
おれの事は、遅《おそ》かれ早かれ、おれ一人で片付けてみせるから、差支《さしつか》えはないが、また例の堀田が[#「また例の堀田が」に傍点]とか煽動して[#「煽動して」に傍点]とか云う文句が気にかかる。
堀田がおれを煽動して騒動《そうどう》を大きくしたと云う意味なのか、あるいは堀田が生徒を煽動しておれをいじめたと云うのか方角がわからない。
青空を見ていると、日の光がだんだん弱って来て、少しはひやりとする風が吹き出した。
線香《せんこう》の烟《けむり》のような雲が、透《す》き徹《とお》る底の上を静かに伸《の》して行ったと思ったら、いつしか底の奥《おく》に流れ込んで、うすくもやを掛《か》けたようになった。