坊っちゃん - 【六】 - 《75》
山嵐もいつの間にか来ている。
欠勤だと思ったら遅刻《ちこく》したんだ。
おれの顔を見るや否や今日は君のお蔭で遅刻したんだ。
罰金《ばっきん》を出したまえと云った。
おれは机の上にあった一銭五厘を出して、これをやるから取っておけ。
先達《せんだっ》て通町《とおりちょう》で飲んだ氷水の代だと山嵐の前へ置くと、何を云ってるんだと笑いかけたが、おれが存外|真面目《まじめ》でいるので、つまらない冗談《じょうだん》をするなと銭をおれの机の上に掃《は》き返した。
おや山嵐の癖《くせ》にどこまでも奢る気だな。