坊っちゃん - 【六】 - 《73》
僕《ぼく》は堀田《ほった》君の事について、別段君に何も明言した覚えはないんだから――君がもしここで乱暴を働いてくれると、僕は非常に迷惑する。
君は学校に騒動《そうどう》を起すつもりで来たんじゃなかろうと妙《みょう》に常識をはずれた質問をするから、当《あた》り前《まえ》です、月給をもらったり、騒動を起したりしちゃ、学校の方でも困るでしょうと云った。
すると赤シャツはそれじゃ昨日の事は君の参考だけにとめて、口外してくれるなと汗をかいて依頼《いらい》に及《およ》ぶから、よろしい、僕も困るんだが、そんなにあなたが迷惑ならよしましょうと受け合った。
君|大丈夫《だいじょうぶ》かいと赤シャツは念を押《お》した。
どこまで女らしいんだか奥行《おくゆき》がわからない。
文学士なんて、みんなあんな連中ならつまらんものだ。
辻褄《つじつま》の合わない、論理に欠けた注文をして恬然《てんぜん》としている。
しかもこのおれを疑ぐってる。
憚《はばか》りながら男だ。
受け合った事を裏へ廻って反古《ほご》にするようなさもしい了見《りょうけん》はもってるもんか。