坊っちゃん - 【六】 - 《94》
ついでだからその結果を云うと、寄宿生は一週間の禁足になった上に、おれの前へ出て謝罪をした。
謝罪をしなければその時辞職して帰るところだったがなまじい、おれのいう通りになったのでとうとう大変な事になってしまった。
それはあとから話すが、校長はこの時会議の引き続きだと号してこんな事を云った。
生徒の風儀《ふうぎ》は、教師の感化で正していかなくてはならん、その一着手として、教師はなるべく飲食店などに出入《しゅつにゅう》しない事にしたい。
もっとも送別会などの節は特別であるが、単独にあまり上等でない場所へ行くのはよしたい――たとえば蕎麦屋《そばや》だの、団子屋《だんごや》だの――と云いかけたらまた一同が笑った。
野だが山嵐を見て天麩羅《てんぷら》と云って目くばせをしたが山嵐は取り合わなかった。
いい気味《きび》だ。