坊っちゃん - 【九】 - 《140》
山嵐は君それを引き込《こ》めるのかと不審《ふしん》そうに聞くから、うんおれは君に奢《おご》られるのが、いやだったから、是非返すつもりでいたが、その後だんだん考えてみると、やっぱり奢ってもらう方がいいようだから、引き込ますんだと説明した。
山嵐は大きな声をしてアハハハと笑いながら、そんなら、なぜ早く取らなかったのだと聞いた。
実は取ろう取ろうと思ってたが、何だか妙《みょう》だからそのままにしておいた。
近来は学校へ来て一銭五厘を見るのが苦になるくらいいやだったと云ったら、君はよっぽど負け惜《お》しみの強い男だと云うから、君はよっぽど剛情張《ごうじょうっぱ》りだと答えてやった。
それから二人の間にこんな問答が起《おこ》った。