坊っちゃん - 【九】 - 《143》
おれが野芹川《のぜりがわ》の土手の話をして、あれは馬鹿野郎《ばかやろう》だと云ったら、山嵐は君はだれを捕《つら》まえても馬鹿|呼《よば》わりをする。
今日学校で自分の事を馬鹿と云ったじゃないか。
自分が馬鹿なら、赤シャツは馬鹿じゃない。
自分は赤シャツの同類じゃないと主張した。
それじゃ赤シャツは腑抜《ふぬ》けの呆助《ほうすけ》だと云ったら、そうかもしれないと山嵐は大いに賛成した。
山嵐は強い事は強いが、こんな言葉になると、おれより遥《はる》かに字を知っていない。
会津っぽなんてものはみんな、こんな、ものなんだろう。