坊っちゃん - 【二】 - 《24》
切符《きっぷ》も訳なく買った。
乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。
ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない。
道理で切符が安いと思った。
たった三銭である。
それから車を傭《やと》って、中学校へ来たら、もう放課後で誰《だれ》も居ない。
宿直はちょっと用達《ようたし》に出たと小使《こづかい》が教えた。
随分《ずいぶん》気楽な宿直がいるものだ。
校長でも尋《たず》ねようかと思ったが、草臥《くたび》れたから、車に乗って宿屋へ連れて行けと車夫に云い付けた。
車夫は威勢よく山城屋《やましろや》と云ううちへ横付けにした。
山城屋とは質屋の勘太郎《かんたろう》の屋号と同じだからちょっと面白く思った。