坊っちゃん - 【三】 - 《36》
最初の日に出た級は、いずれも少々ずつ失敗した。
教師ははたで見るほど楽じゃないと思った。
授業はひと通り済んだが、まだ帰れない、三時までぽつ然《ねん》として待ってなくてはならん。
三時になると、受持級の生徒が自分の教室を掃除《そうじ》して報知《しらせ》にくるから検分をするんだそうだ。
それから、出席簿《しゅっせきぼ》を一応調べてようやくお暇《ひま》が出る。
いくら月給で買われた身体《からだ》だって、あいた時間まで学校へ縛《しば》りつけて机と睨《にら》めっくらをさせるなんて法があるものか。
しかしほかの連中はみんな大人《おとな》しくご規則通りやってるから新参のおればかり、だだを捏《こ》ねるのもよろしくないと思って我慢《がまん》していた。
帰りがけに、君何でもかんでも三時|過《すぎ》まで学校にいさせるのは愚《おろか》だぜと山嵐に訴えたら、山嵐はそうさアハハハと笑ったが、あとから真面目《まじめ》になって、君あまり学校の不平を云うと、いかんぜ。
云うなら僕《ぼく》だけに話せ、随分《ずいぶん》妙な人も居るからなと忠告がましい事を云った。
四つ角で分れたから詳《くわ》しい事は聞くひまがなかった。