坊っちゃん - 【五】 - 《59》
可笑《おか》しい事に釣れるのも、釣れるのも、みんなゴルキばかりだ。
鯛なんて薬にしたくってもありゃしない。
今日は露西亜文学の大当りだと赤シャツが野だに話している。
あなたの手腕《しゅわん》でゴルキなんですから、私《わたし》なんぞがゴルキなのは仕方がありません。
当り前ですなと野だが答えている。
船頭に聞くとこの小魚は骨が多くって、まずくって、とても食えないんだそうだ。
ただ肥料《こやし》には出来るそうだ。
赤シャツと野だは一生懸命に肥料を釣っているんだ。
気の毒の至りだ。
おれは一|匹《ぴき》で懲《こ》りたから、胴の間へ仰向《あおむ》けになって、さっきから大空を眺めていた。
釣をするよりこの方がよっぽど洒落《しゃれ》ている。