坊っちゃん - 【六】 - 《81》
会議というものは生れて始めてだからとんと容子《ようす》が分らないが、職員が寄って、たかって自分勝手な説をたてて、それを校長が好い加減に纏《まと》めるのだろう。
纏めるというのは黒白《こくびゃく》の決しかねる事柄《ことがら》について云うべき言葉だ。
この場合のような、誰が見たって、不都合としか思われない事件に会議をするのは暇潰《ひまつぶ》しだ。
誰が何と解釈したって異説の出ようはずがない。
こんな明白なのは即座《そくざ》に校長が処分してしまえばいいに。
随分《ずいぶん》決断のない事だ。
校長ってものが、これならば、何の事はない、煮《に》え切《き》らない愚図《ぐず》の異名だ。